氷ノ山
(兵庫県・標高1510m)
Date:2004年10月17日
天気:曇り メンバー:2名

氷ノ山は、加藤文太郎にすっかり心酔してしまっている"猫チャン"の憧れの山の一つ。
加藤文太郎の在りし日の姿を求めての山行となるはずが…。


前日は養父の道の駅「但馬楽座」にて車中泊、4時頃暗闇の中を出発して、東尾根登山口を目指した。 林道らしきところを走っているとき、「たぬき!」と、"熊チャン"の声。寝ぼけ眼をを凝らすと、前方にぼんやり影が! 目を光らせこちらを見つめている。それもほんの一瞬の出来事で、彼は慌てて藪の中に逃げてしまった。 「わーい、なまタヌキ、見た!!」と、はしゃいでいるうちに朝もやの東尾根登山口に到着。駐車場は、乗用車が4〜5台止められそうなスペース (近くにトイレあり)。先着の車は1台のみ。人影は見あたらない。コーヒーとパンとチーズの朝食を手早く済ませ、身支度を整えているとワンちゃんを連れたご夫婦が霧の中から現れた。 挨拶を交わした後、「今日は氷ノ山の登山大会ですよ」と教えてくださった。「えっ、あれ今日なんですか? 人、多いでしょうか?」"熊チャン" がすかさず問い返している。 そういえば、ここに来る途中、いたるところに横断幕や看板があった。「多いとはいえ、しれてると思いますけどね。 でも、早く登るにこしたことはないと思いますよ。」こう言い残して、ふたりプラスワンちゃんは先に 登って行かれた。私たちも慌ただしく支度を済ませた。
(←氷ノ山の朝焼け)
8時、登山開始。連日の熊騒動の報道を意識して、鈴をつけての山行。いきなりの急登。しかも無粋な 階段ときた。が、いつも通りゆっくりゆっくり登っていると下の方から早くも人の声がし、思うまもなく抜かれてしまった。若い3人組の男性で、うち一人は既に息が上がっていた。"熊チャン"と目を合わす。 「ハアハア、ぜいぜいの歩き方は駄目!」と"熊チャン"の目が語っている。【山の空気を体全体で味わって、 風が葉っぱを揺らす音やとりのさえずりに耳を傾ける。その時間こそが、醍醐味】いつもいつも、それこそ耳にたこができるほど"熊チャン"が言ってくれる言葉。
やがて東尾根の休憩小屋に着いた。さっき、はるか前に追い越していった3人組が小屋の中で休憩していた。 晴れていれば後山方面が見えるのかもしれないが、あいにく今日はガスが出ていて視界が悪い。 小屋前のベンチに腰を下ろして水分補給するもつかの間、すぐに歩き始めた。尾根道は広くはないけれどしっかり踏み固められている上、傾斜もさほどないので歩きやすい。 登山大会の参加者らしき人たちが大勢私たちを追い越していく。歩くというよりは走っている感じだ。 10時前頃、神大ヒュッテ着。登山大会のポイント場になっているらしく、大勢の人で溢れかえっている。ここで小休止をとることにした。
ジャ、ジャーン!"熊チャン"の裏技(?)のマット登場。これは何を隠そう、ほんの何日か前までお風呂マットとして 立派にその責務を果たしていた代物で、役目を終えた後、今度は身を二つに切られ、"熊チャン猫チャン"の大きなお尻の下で頑張っている、とても 働き者のマットなのだ!「あったか〜い! マットちゃん、大好き!」"猫"がマットに感動しているうちに "熊チャン"はテキパキと準備を進めている。お湯を沸かしてコーヒーを淹れてくれるのだ。
続々と登山大会参加者が駆け上ってくる。私たちの周りだけ、何だか妙にマッタリしてしまって、流れている空気がやけにのんびりしている。
とは言え、体を冷やすわけにはいかない。おもむろに立ち上がり、ストレッチをしてから歩き始める。霧はますます濃くなってきたようだ。
山頂手前、植物を保護するために登山道が板で覆ってある。進入を禁止する綱が張ってあるところもある。景観を損ねてでも守らなければならない自然。そこまでしなければ守れない自然。 そして今ここにいる自分。思索の袋小路に入り込みそうだ。「自然に対する敬虔な気持ちと感謝の念を 忘れない。ご飯を食べる前のいただきますと一緒ですよ。」 "熊チャンが"袋小路からの脱出口を教えてくれる。
登山大会は何種類かコースがあるらしく、頂上から下りてくる人たち大勢と行き交う。
11時過ぎ、山頂到着。広々とした頂上に横殴りの風が吹きつける。ガスで眺望は全くなし。色鮮やかな 避難小屋は人で溢れている。記念撮影も順番待ち。 「少し下ってから休憩にしようか。」周囲の人たちに目をやりながら"熊チャン"が言う。ということで、氷ノ山越えの方面へ下り始めた。 道は、ぬかるみを大勢が歩くものだから、まるで田植え前の田んぼ状態で、こんなところで滑って転んだらエライこっちゃと、慎重にならざるを得ない。 足下に気をとられながらようやく氷ノ山越えに着いたもののここも人でごった返している。登山大会の人たちが昼食中で、ゆったり腰を下ろすスペースが見あたらない。 「仕方ない、もう少し下ってみよう。おなかは大丈夫?」「平気!こんな時のために、普段から脂肪を 蓄えているのだ!」(←by"猫チャン") "熊チャン"のこの判断はばっちり当たって、その後は静かな山を満喫できた。
加藤文太郎が一夜を過ごしたという地蔵堂は悲しいかな青いトタンで覆われた、情緒も何もない小屋になっていた。が、 中に積んである梁や柱、そして真ん中に鎮座しておられる大きなお地蔵様は往時のものかもしれないと気を取り直す。
この頃になってようやく霧が晴れ、黄葉が始まったブナ林の中を光が差すようになった。落ち葉を踏みしめながら歩く。 心地よい感触を楽しむ。遠くから水の音が聞こえてきたので地図を広げてみると、布滝、続いて不動の滝とある。滝を眺めながら 昼食をとることにし、最初に出くわした布滝のほとりで支度にかかる。今日の昼食はラーメン。「自分で つくってみなさい」と、ラーメンと鍋を渡され、ストーブの使い方をレクチャーしてもらった。初めての"猫"はこわごわ触る。 「おー!」「ほーっっ!」「へ〜!!」
山で初めて自分で作ったラーメンは「おいしかった!!」
後は沢の音を聞きながらの下山。親水公園に到着したのは14時頃。綺麗に整備されたキャンプ場には テントが3梁ほど張られていた。今度はここを使ってもいいねえなどと言いながら、トイレだけ拝借する。 自動車道を30分ほど歩いて東尾根の駐車場へ到着。本物の熊さんも気後れしそうなほどの人群れだったが、後半は 静かで落ち着いた山行になった。

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